サラリーウーマンから書家への転身
私の元後輩にあたる人物が、有名な書道家として活躍しています。
出会った時の彼女は、大学を卒業したばかりで、「どうしてこの会社に就職したの」と聞くと「どこでも良かったんです、本社が神戸にあれば」と返してくるような現代っ子でした。
そんな彼女の配属先は広報部だったのですが、新入社員研修の一環で私の居るオフィスに3か月間配属になり、私がOJT担当となりました。
困った時は休日でも電話をしてきて、人懐っこい猫のようなタイプの子でした。
研修後は本社の広報部に配属になり、カタログ製作を任されたのですが、そのカタログがユーザーから評価が低く、最悪の事態としてクレーム品となりました。
彼女は会議で責められ、それが会社を辞めるきっかけでもあり、書道家への転身のスタートだったようです。
何か違うと感じたのでしょう。
自分のあるべき姿を求めて、大きく飛躍した彼女の活躍を嬉しく思います。
住む世界が違うと感じたら、思い切って飛び出すことも重要です。
いつまでも身動きできない世界に留まらなければならないというルールはどこにもないのですから、自由に自分を活かせることを職業にすれば良いのです。
書家も人気職業のひとつではありますが、想像の通り、人気書家となるには戦略が必要です。
作品だけで上り詰めるのは稀で、どうしたら名を知ってもらうか、ということを最優先して活動するべきなのです。
実績作りも大切ですが、何が売りなのかを見つめなおしましょう。
書と仲間
「仲間の大切さ」や「仲間が居るから頑張れる!」ということを学んだのは、私が高校生の時です。
私は書道部に所属していました。
幼稚園の頃から習字教室には通っていたので、それなりに自信はありました。
しかし入ってみて、今までの「習字」と「書道」との違いに愕然としました。
筆の使い方から紙の大きさまで、何もかもがそれまでとは違う世界でした。
それでも何とか毎日活動を続け、2年生になった頃には自分が専門にする字体も見つけ、大会などでも実績を残すことが出来るようになってきました。
基本的に書道というものは、個々人がそれぞれの作品を作るものなので、個人競技だと思われていると思います。
確かにそれはそうなのですが、大会においては少しだけ違って、寧ろチーム戦という感じです。
大会には、あらかじめ書いた作品を提出してそれを評価してもらうものと、道具等を持って会場に行き、その場で与えられた課題を時間内に書きあげ提出するものとの二種類があります。
特に後者において、よい成績を残すためには、他の部員の協力が不可欠です。
複数枚仕上げた作品のどれを最終的に提出するか、仕上げた作品のどこに自分の印を押すか、そういったことは作品を書いた本人よりも、周りに居る人の方がよく分かることもあります。
作品を書く会場に顧問は入ることが出来ないので、必然的に、部の仲間達に協力を仰ぐことになります。
皆自分の作品で手一杯の中、お互いの作品の最後の仕上げに全力を尽くして協力しあうのです。
協力した分、仲間の作品が評価されると自分まで嬉しくなります。
実際、私が印を押す場所をアドバイスした後輩が全国大会に進んだ際には自分のことの様に嬉しかったです。
卒業して何年も経った今、部活の思い出として思い出すのは、一人で黙々と字を書いている姿ではなく、仲間と協力しながら一つの作品を作り上げている姿です。
大人になってから滅多に書道をすることはなくなりましたが、またいつかあの頃の仲間達と字を書くことが出来たらなあ、と思っています。